岩下登の健康のツボ 〜疲労回復や健康維持に役立つ方法〜
 

第30回 症例編 〜その9 膝の成長痛〜

 こんにちは。岩下です。
  急激に寒くなり、あっという間に冬になってしまいましたね。秋が短かったですが、紅葉は綺麗だったようです。皆さんはどんな秋を感じたでしょうか。
  今年は気温差が激しい一年でしたね。気温や室温など、温度差が5℃以上あると自律神経の働きが悪くなると言われています。前日との気温差が5℃以上あるとか、外と室内の温度差が5℃以上あるとか…。これからもあり得る状況ですので、衣服の調節や室温の調節でコントロールしましょう。
  また、この時期の大敵は乾燥。感染症にかかりやすくなるのはもちろん、静電気にも気をつけたいものです。
  年末の忙しい時期です。楽しい行事も増えますね。体調管理を万全にして、元気に過ごしてください。

  一般に「成長痛」は、成長期の子供に多くみられる痛みの総称です。どこまでが成長痛なのかはっきりとした分類は、医学的にも明確ではないようです。
  骨の成長は、骨の端っこ(骨端部という)の骨端軟骨層が発育して長くなります(太さは別の機序です)。成長期の骨端軟骨は弱く、強い衝撃を受け続けると炎症など障害を受けやすく、痛みが起こることから、「成長痛」と言うことが多いのです。
  膝の成長痛の病名は「オスグッド・シュラッター病」です。今回は、その症例をご紹介します。


症例1 Q氏 10代 女児

職業:小学生
病歴:バスケットをしていて左膝が痛くなった。体育の時間も痛みがある。整形外科でオスグッドと言われ、安静にするように言われたが、運動会の練習やバスケットの試合などがあって休めない。
所見:左膝蓋靱帯周辺に熱感・圧痛あり。左大腿四頭筋の筋緊張あり。
治療:
1日目
  @全身調整
  A置鍼 仰向け 15分
  〈治療点〉(左)梁丘・鶴頂・血海・足三里・陰陵泉・膝蓋靱帯周辺
  ●痛む部分に冷湿布をして、可能な限り安静にすることを指導。
2回目(1週間後) 少し良い。 熱感消失、圧痛は軽度あり。大腿四頭筋筋緊張軽度あり。
  @は同じ
  A置鍼・遠赤(姿勢・時間・治療穴は同じ)
  ●バスケット・体育の時間など、運動する際は準備運動・整理運動をして、痛みが強い時・運動中痛みが強くなった時は無理をしないよう指導。
3回目(1週間後) 運動した後に痛くなるけど、だいぶいい
  @・Aは同じ
  ●運動後、すぐにアイシングをして、その後温めるよう指導。
4回目(1週間後) バスケットの試合に出ることができた
  @・Aは同じ
  ●左足のストレッチを指導。
※5回目の治療で痛みが消失した症例である。バランス的に左が弱かったので、 チューブでの筋トレも指導し、これまで指導した分も含め、真面目におこな ってくれた結果、順調に回復した。現在も元気に運動しているとのことである。

 

症例2 R氏 10代 女性

職業:中学生
病歴:バレーボールをしていて右膝が痛くなった。病院でオスグッドと診断。チームの人数がギリギリなので早く治したいとのこと。
所見:右膝蓋靱帯周辺の軽度の腫脹・圧痛あり。右大腿四頭筋・大腿二頭筋の筋緊張あり。
治療:
1回目
  @全身調整
  A置鍼 仰向き・うつ伏せ 各10分
  〈治療点〉(仰向き)梁丘・鶴頂・血海・足三里・陰陵泉・膝蓋靱帯周辺
(うつ伏せ)大腿二頭筋(6箇所)
  ●準備運動・整理運動、運動直後のアイシングを指導。
2回目(3日後) かなり良い 腫脹・圧痛、筋緊張軽減。
  @は同じ
  A仰向きの置鍼の時遠赤使用 他は同じ
3回目(1週間後) ほとんど痛くなくなった
  @は同じ
  A仰向きの治療のみ実施(置鍼…遠赤)
※この後、2回ほど治療をして治療を終了している。上記の症例同様、準備運 動・整理運動、ストレッチ、筋トレを継続して実施しているようで、活躍し ていると聞いている。

 今回の症例は、どちらも親御さんが鍼灸治療を受けていて、早い段階で相談があり、治療が開始できたため、若さもあり、治療効果が早く出た症例である。
  障害の度合いが強い場合、歩けなくなることもあるらしいので、成長期のお子さんが痛みを訴える場合は、早めの整形外科受診をお勧めします。未来がある子供達ですから、きちんと診断してもらいましょう。治療方法の中に鍼灸治療があることも、覚えていてくださいね。お手伝いできると思います。

今年はこれが最後の紹介となります。ご覧頂き、有難うございました。来年も少しでもお役に立てるよう、頑張ります。
  どうぞ、元気で、良いお年をお迎えください。

 

この症例の紹介が、治療を受けるきっかけになれば幸いです。

次回は「鼻炎」の症例をご紹介します。



岩下 登 (岩下鍼灸院 院長)
著者

岩下鍼灸院 院長
岩下 登

Noboru Iwashita


MENU
【第30回】症例編
その8 膝の成長痛
【第29回】症例編
その8 心の症状
【第28回】症例編
その7 バネ指
【第27回】症例編
その6 むくみ
【第26回】症例編
その5 関節水腫
【第25回】症例編
その4 喘息
【第24回】症例編
その3 五十肩
【第23回】症例編
その2 耳鳴り
【第22回】症例編
その1 ぎっくり腰
【第21回】症状とツボ
その20 坐骨神経痛
【第20回】症状とツボ
その19 頸椎症
【第19回】症状とツボ
その18 小児の症状(2)
【第18回】症状とツボ
その17 小児の症状(1)
【第17回】症状とツボ
その16 精神的な症状
【第16回】症状とツボ
その15 泌尿器の症状
【第15回】症状とツボ
その14 呼吸器の症状
【第14回】症状とツボ
その13 口・のどの症状
【第13回】症状とツボ
その12 自律神経症状
【第12回】症状とツボ
その11 耳・鼻の症状
【第11回】症状とツボ
その10 女性特有の症状
【第10回】症状とツボ
その9 五十肩・テニス肘
【第9回】症状とツボ
その8 手足の症状
【第8回】症状とツボ
その7 消化器症状
【第7回】症状とツボ
その6 冷え性
【第6回】症状とツボ
その5 便秘
【第5回】症状とツボ
その4 膝痛
【第4回】症状とツボ
その3 腰痛症
【第3回】症状とツボ
その2 頭痛・頭重感
【第2回】症状とツボ
その1 眼精疲労 肩こり
【第1回】鍼灸について

いさはやWEB情報室の見方・楽しみ方
▲ページTOP

Copyright(c) Isahaya the chamber of commerce and industry. All rights reserved.
サイト内の画像・文章等の無断転載・複製を禁止します。