岩下登の健康のツボ 〜疲労回復や健康維持に役立つ方法〜
 

第22回 症例編 〜その1 ぎっくり腰〜

 こんにちは。岩下です。
 めっきり秋めいてきましたね。稲刈りも終わったところもあるようで、美味しい新米をはじめ、たくさんの旬な食べ物がお目見えし、楽しい日々を送っている人もいらっしゃるのではないでしょうか?私は毎日ジョギングに励んでおります。ま、これも美味しいお酒を飲むためなのですが(笑)。食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋…。短い秋を満喫していただきたいものです。
 さて、今回からは、私が実際に治療をおこなっている中で、よく見られる症状や、鍼灸治療で顕著な改善がみられたものを症例としてあげてみたいと思います。症例に当てはまる方や似た症状で悩んでいる方に、選択肢のひとつとして参考にしていただければ…と思います。

 この時期に多くみられる症状です。季節の変わり目で、気温の変化に適応するため、体は頭で考えているより疲れています。特に筋肉は、気温や気圧の変化に応じて、無意識に伸びたり縮んだりして、疲労しているのです。ですから、些細なことで痛めてしまいます。患者さんは「これだけしかしていない」「たったこれだけで…」と言いますが、筋肉にとってはそんな些細なことでもオーバーワークになってしまうのです。
 炎症ですから、以前お話ししたことがあると思いますが、絶対揉んではいけません。特に、直後は「安静」と「冷却」が原則です。揉んでひどくなって来院される患者さんもたくさんいますので、注意して下さい。


症例1(A氏 30代 男性)

職業:農業
病歴:3日ほど前、朝起きようとしたら腰全体に痛みを感じ、起き上がれなかった。行きつけの整骨院で治療してもらったが良くならず、知人より「鍼が良い」と聞き来院。これまでも数回、年に一度、このような状態になっていた。少し前かがみになっていないと歩けない。
所見:左腰部の筋緊張著明。腰部の打診で痛みあり。起立時に上体が左に傾いている。
治療:
1日目
 @全身調整
 A置鍼(左右側臥位で)各15分
 〈治療穴〉腎兪・大腸兪・膀胱兪・肓門・志室・胞肓・小野寺殿部点・委中承山
 B腰部のテーピング
 C指導 ふくらはぎを冷やさないよう、就寝時は長ズボンを着用すること
2日目 痛みが左腰殿部のみになった。上記所見も軽減。
 @全身調整
 Aパルス(電気治療 右側臥位で) 15分
 〈治療穴〉上記ツボと同じ
 灸(せんねん灸の様なもの)各2個
 〈治療穴〉腎兪・大腸兪・志室・小野寺殿部点
 B腰部のテーピング
 C指導 半身浴で腰から足を温めること
3日目 左腰殿部の痛みはほぼ消失。違和感が残る。上記所見は見られず。
 @全身調整
 Aパルス(右側臥位で) 10分
 灸 各2個
 〈治療穴〉2日目と同じ
4日目 症状は消失。
 @〜Bを3日目同様施術
補足説明:この症例は、4日間連日で治療をおこない、その後、週に1度の治療を3回おこなって完治したものである。筋疲労と冷房などによる冷えが素因となっていたものだったので、就寝時の長ズボン着用を指導した。整骨院で揉んだ後、同じ日に来院したこと、打診で響きがあったことを考慮し、1日目は置鍼で静かに刺激し、患部の安静のためのテーピングもおこなった。
 

症例2(B氏 60代 女性)

職業:パート勤務(冷えた部屋で立ち仕事)
病歴:元々腰痛持ちで、病院で治療を受けたこともあった。急に右腰から臀部にかけて激しい痛みが出現し来院。歩く時は右腰に手を当てると少しラクであるとのこと。
所見:右腰部の筋緊張著明。仰向けでお尻を上げる動作の時に痛みが強く出現。
治療:
1日目
 @全身調整
 A置鍼(左側臥位で) 15分
 〈治療穴〉命門・陽関・腎兪・大腸兪・膀胱兪・胞肓・肓門・志室・小野寺殿部点・居B
 B腰部のテーピング
 直後効果手を当てなくても歩けるようになった。 
2日目 違和感はあるが、日常生活に支障はない。お尻を上げた時の痛みはほぼ消失。
 @全身調整
 Aパルス(左側臥位で) 10分
 〈治療穴〉1日目と同じ
 B腰部のテーピング
3日目以降
 @全身調整
 Aパルス(うつ伏せで) 10分
 〈治療穴〉腎兪・大腸兪・膀胱兪・胞肓・肓門・志室・小野寺殿部点・居B
補足説明:この症例は、2日続けて治療をおこなった後、慢性腰痛で週に2回治療を継続しているものである。仰向けでお尻を上げると腰に痛みが出たり、お尻を上げることができなかったりする場合は、椎間筋に炎症がおこっていて、椎間にあるツボにも置鍼をおこなった。
 

 今回紹介した症例は、来院できたもので、ひどい場合は動けないこともあります。その場合は、先ほど書いたように、「安静」と「冷却」をおこなってください。動けるようになったら、早めに鍼灸治療を受ける事を、鍼灸師の立場からお勧めします。


岩下 登 (岩下鍼灸院 院長)
著者

岩下鍼灸院 院長
岩下 登

Noboru Iwashita


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